連載企画
相続税豆知識

第18回 相続と家族信託(6) 家族信託の活用事例〜高齢者福祉信託編〜

 こんにちは、岸本です。
 ややこしいタイトルで始まりましたが…内容はややこしくありませんので、ご安心ください。
 今回は高齢者福祉型信託の活用事例です。高齢者福祉型信託とは、加齢や認知症などにより判断能力や財産管理能力が低下した高齢者の生活支援を目的とした信託をいいます。
 では、その活用事例をご紹介しましょう。
 家族構成は高齢の夫婦、長男、次男です。年老いた夫、認知症を患った妻、浪費癖のある長男、堅実な次男。この家族構成で夫が亡くなった後考えられることは、妻に金銭を相続させても財産管理ができず、長男が浪費してしまうことです。そこで堅実な次男に金融資産を託して、妻に必要な生活費や医療費を渡すことを目的とした信託を設定します。その契約内容は次の通りです。
委託者(遺言者):夫
受託者:次男
 受益者:妻
 信託財産:預貯金
 目的:妻の生活支援
 この信託は今まで紹介しました信託と違う点があります。それは委託者が遺言者となっている点です。夫が生きている間は妻の生活を夫が支援するため長男の浪費も抑えることができます。問題は夫が亡くなった後のことで、長男の浪費を防ぐ信託の設定を行うのです。
 この信託により、夫の死後次男が受託者として預貯金を管理し、そこから妻に必要な生活費や医療費を支出するのです。信託にはこのような活用の方法もあるわけです。
さて、今回で信託についての記事は一段落とさせていただきます。今年の初めから信託について皆様にお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか?活用事例中心にお伝えしましたので、ある程度身近に感じていただけたのではないでしょうか。今までお伝えしました活用事例は、それぞれのパターンについて、こういう信託の設定ができるという例示でしかありません。実際にはそれぞれのケースに応じて最良の設定を信託契約において行うことになります。信託のメリットは柔軟な契約を設定できることにあるのです。
以上、相続税豆知識第18回でした。