連載企画
相続税豆知識

第13回 相続と家族信託(1) 信託とは何ぞや?

 こんにちは、岸本です。
 昨年は1年かけて相続税の基礎知識をお伝えしました。今年は信託をテーマに挙げてお伝えしていきます。…と、いってもいろいろ疑問が湧いていると思います。私が友人との会話で信託のことを切り出すと、「信託って投資の話?」と返されました。もちろん投資の話をするわけではありません。投資信託も信託の一種ですが、私がお伝えする信託とは目的が異なります。具体的に信託が相続にどう絡んでくるかを説明する前に、まずは信託とはどのようなものなのか、ということについてお伝えします。

 信託とは、ズバリ、信じて託すこと、です。…ハイ、決してふざけているわけではありません。人が誰かを信じて自分の財産を託す、これが信託の定義なのです。具体的に説明しますと、個人Aが個人Bに財産を信じて託します。個人Bはその財産を運用し、その運用益を個人Cに給付します。以上です。…わかりにくい?…そうですよね。では、もう少し具体的に説明しましょう。
 Aさんはアパートを保有しています。このアパートの管理運用を息子のBさんに任せることにしました。そこでアパートを息子のBさんに託します。託されたBさんはアパートを管理運用します。そして、その家賃は孫のCさんに受け取ってもらおうとAさんは決めました。Bさんはその取り決めに従い、家賃をCさんに給付します。というのが信託の流れの一例です。これならわかりやすいでしょう。…自分ではそう納得しています。

 ちなみに、一例としましたのは、信託の取り決めは柔軟な設定ができるためです。その柔軟な設定で相続対策を行うことができるのです。…ハイ、相続「税」対策ではなく、相続対策です。なんと、この信託、相続税対策にはなりません。信託でも相続税対策になる部分はあるのですが、それは信託でなくても行うことができるのです。それでもこの信託をテーマとしてお伝えする理由は、相続対策にこの信託がとても有効であるためです。今後の記事を通してその有効さを理解していただける…はずです。
 と、いうことで、今回はここまで。次回から家族信託の活用事例を紹介します。