連載企画
相続税豆知識

第14回 相続と家族信託(2) 家族信託の活用事例〜自宅編〜

 こんにちは、岸本です。
 今回は家族信託の活用事例をお伝えします。家族信託とは、信託のうち家族に財産を預けて相続を円滑に行うことを目的とするものをいいます。次の親族図をご覧ください。

 前妻との間に子がいる夫。後妻との間に子はなく、養子縁組も行っていません。夫、後妻、子が同居しているケースです。夫は自宅を自分→後妻→子の順に相続させたいと考えたとします。この場合、子は後妻の相続人でないため後妻から子へ引き継がせるためには将来後妻に遺言書を作成してもらう必要が生じます。
このような場合には夫と子の間で信託契約を締結することが有効な対応策となります。
その内容は次の通りです。
1. 財産を預ける人→夫 財産を預かる人→子 財産の恩恵を受ける人→夫
この場合の財産の恩恵とは自宅に居住する権利を指します。
2. 財産→自宅、生活に必要な程度の預金
3. 夫が死亡したら後妻が財産の恩恵を受ける人となる
1. 後妻が死亡したら信託契約が終了し子が財産を取得する
この契約により、子が自宅の管理を行い、夫が居住する権利に基づき後妻、子と共に居住します。夫の死亡後は居住する権利が後妻に移転し、後妻の死亡により信託契約が終了し子が自宅を取得することになるのです。遺言では夫が死亡した後の財産の流れは設定できませんが、信託であれば可能となるのです。
次回は財産がアパートである場合の活用事例をお伝えします。以上、相続税豆知識第14回でした。