連載企画
相続税豆知識

第15回 相続と家族信託(3) 家族信託の活用事例〜アパート編〜

 こんにちは、岸本です。
 今回はアパートのオーナーが信託を活用する事例を紹介します。

家族構成はオーナー、妻、子です。高齢となったオーナーがアパートの管理を子に任せるため、オーナーと子の間で信託契約を締結します。契約内容は次の通りです。

1. 財産を預ける人→オーナー 財産を預かる人→子 財産の恩恵を受ける人→オーナー(オーナーの死亡後は妻)
2. 財産→アパート
3. 目的→アパートの管理
4. 妻死亡により信託は終了し、残余財産は子が取得

この契約によりアパートの所有権は子に移転します。子は契約に従い入居者と賃貸借契約を結んだり、アパートの修繕を行なったりします。所有権は子に移転しますが、Bの目的がアパートの管理とな
っているため、子は勝手にアパートを売却することはできません。子は家賃収入から管理費用など差し引いて@の恩恵を受ける人であるオーナーに配当金を支払います。

もしオーナーが認知症になったとしても、アパートの所有権は子に移転しているため、子は何の影響も受けることなく引き続きアパートの管理を行うことができます。なお、Bの目的に不動産の売却と決めておけば、オーナーが認知症になってもアパートの売買を子が行うことができます。

そしてオーナー死亡後は@により妻が配当金を受けることができ、妻死亡後はCにより残余財産であるアパートを子が取得することになるのです。

このような柔軟な設定は遺言では行うことができません。信託だからこそできるスキームなのです。

次回は企業オーナーの活用事例について説明します。以上、相続税豆知識第15回でした。